日本では「アンニュイな雰囲気」など、おしゃれなイメージで使われる言葉ですが、オリジナルであるフランス語では、おしゃれとはかけ離れた意味だったんです!
褒めたつもりが貶すことにならないよう、本来の意味を見てみましょう。
レッスンの内容
「アンニュイ」な映画
今日の花子さんとマリーさんは映画を見にお出かけです。ところが終わってみると、残念ながらあまり楽しくなかったようですよ。
会話
Marie : Tu as aimé ce film ? Je le trouve un peu ennuyeux.
この映画、面白かった?私はちょっと退屈な映画だと思うわ。
Hanako : Tu as raison. Il est ennuyeux et trop long !
その通りね。退屈だし、長すぎるわ!
Surtout au milieu, je m’ennuyais tellement que j’ai failli m’endormir.
特に中盤では、退屈しすぎて寝そうになったもの。
Marie : Je comprends. Mais moi, en tout cas, je n’avais pas sommeil pendant la séance.
分かるわよ。でも私、ともかく上映中に眠くはならなかったわ。
Hanako : Ah bon ?
そうなの?
Marie : En fait, un couple assis à côté de moi, m’ennuyait beaucoup.
あのね、隣に座っていたカップルにすごくイライラさせられたのよ。
Ils n’arrêtaient pas du tout de parler, de bouger, et de manger du pop-corn !
話すのも、動くのも、ポップコーンを食べるのも全然やめないの!
Hanako : Pas de chance. C’est à cause d’eux que tu avais l’air irritée en sortant de la salle.
ついてなかったわね。上映室を出たときイライラした様子だったのは彼らのせいだったのね。
J’étais assez ennuyée.
心配したのよ。
Marie : Désolée de t’ennuyer. Mais je n’aime pas les gens ennuyeux comme eux qui ne peuvent penser qu’à eux.
心配させてごめんなさいね。でも、あんな自分たちの事しか考えられない困った人達ってきらいだわ。
フランス語の「アンニュイ」
ではフランス語の「アンニュイ」に関する単語をチェックしてみましょう。
名詞 ennui
心配・悩み・退屈
心配・悩みなどでは「ennuis」と複数形で使われることがほとんどです。困っていることがある、面倒ごとがある、などを「avoir」と共に表現できます。
J’ai des ennuis de santé.
健康上の心配がある。
Tu as toujours un tas d’ennuis.
君はいつも山のようにトラブルを抱えている。
形容詞 ennuyeux(se)
嫌な・困った・退屈な
ここからは会話で使われた文を例に見てみましょう。
Je le trouve un peu ennuyeux.
私は(その映画を)退屈だと思う。
Il est ennuyeux et trop long !
(その映画は)退屈だし、長すぎる!
1つ目の文では「le」が、2つ目の文では「il」が「その映画」を指しています。どちらも「退屈な映画」であったことを述べていますね。
je n’aime pas les gens ennuyeux comme eux qui ne peuvent penser qu’à eux.
あんな自分たちの事しか考えられない困った人達ってきらいだわ。
こちらの文で「ennuyeux」なのは「eux qui ne peuvent penser qu’à eux 自分たちの事しか考えられない人達」です。
ですので、この場合の「ennuyeux」は「退屈な」人達ではなく「困った・嫌な」人達の意味が正解ですね。
形容詞 ennuyé(e)
困った・心配している
J’étais assez ennuyée
私は心配しました。
映画館の上映室から出る時のマリーさんの機嫌が悪そうだったので、花子さんが心配した、という状態です。
ただ純粋に心配した、というより、機嫌の悪い状態のマリーさんに当惑した、というニュアンスが感じられます。
動詞 ennuyer
困らせる・心配させる・イライラさせる・退屈させる
un couple assis à côté de moi, m’ennuyait beaucoup.
横に座っていたカップルが、すごく私をイライラさせた。
少し長いですが主語は「un couple assis à côté de moi 横に座っていたカップル」です。彼らが「me(m’) 私を」イライラさせた、という文です。
Désolée de t’ennuyer.
(あなたを)心配させてごめんなさい。
こちらに主語をつけると「Je suis désolée ~」となるので、心配をかけた人は「Je 私」、心配をかけられた相手は「te(t’) あなた」となります。
代名動詞 s’ennuyer
退屈する・うんざりする
je m’ennuyais tellement que j’ai failli m’endormir.
退屈しすぎて、寝そうになった。
「退屈だ」「(同じことの繰り返しなどで)うんざりだ」という表現です。
日本風「アンニュイ」のフランス語表現
日本語風の「アンニュイ」のイメージは、きっと「物憂げな」「哀愁を帯びた」といったところでしょうか。
それに近いフランス語は「ennuyeux」でなく「mélancolique」ですが、意味は「ゆううつ・侘しい」、もしくは「鬱病の」です。決して良い意味ではありませんね。
Je suis mélancolique
私はゆううつな気分だ。/ 私は鬱病である。
アンニュイもメランコリックも、日本語とフランス語では与えるイメージがずいぶん違うようですね。
フランス語で会話するときには、日本でのイメージに引きずられないよう気をつけたいところです。